2011/10/16

論拠の構築 ("The craft of research" 7-11章)

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"The craft of research." Booth WC, Colomb GG, Williams JM. Univ of Chicago Press. 2008. (3rd ed.) ※1 を読んでのメモです.
今回は,論拠を構築する,ということについて書かれた部分からの抜き書きです.

7章 良い論拠 (argument) を構築する

7.1 読者との対話としての論拠

p. 109
論拠は以下の5つの問いに答えることによって構築される.
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1. 主張 (claim) は何か?
2. その主張を支える理由 (reason) は何か?
3. その理由を支える証拠 (evidence) は何か?
4. 別な可能性 (alternatives) / もっと複雑な証拠 (complications) / 反対意見 (objections) を認識しているか?そしてそれらにどう対応するか?
5. 2の理由から1の主張が導かれるのを妥当 (relevant) にする原理 (principle) は何か? (この原理は根拠 (warrant) と呼ばれる)
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7.2 主張を支える

p. 111
・理由は,私たちの精神のはたらきによって思いつかれる.
・証拠は,「その外」の「物質的な」現実世界にあり,誰もがわかるようなかたちにして示さなければならない.

7.3 予期される問いかけや反論を認識し,それらに答える
7.4 理由の妥当性を保証する

p. 116
CLAIM because of RESON based on EVIDENCE...
ACKNOWLEDGEMENT AND RESPONSE I acknowledge these questions, objections, and alternatives, and I respond to them with these arguments…
WARRANT The principle that lets me connect my reason and claim is...


8章 主張を決める

8.2.2 主張を意味あるもの (significant) にする

p.124
もっとも意味のある主張は,研究者のコミュニティがこれまで深く信じてきた考えに変革を迫るものである.
読者は,研究が新たなデータを示しているだけでなく,そのデータを利用して,不可解な,矛盾した,問題になっていたトピックを解決したときに,その研究をより高く評価する.
さらに言うと,読者は,解決済みだと長く考えられていたトピックがひっくり返されたときに,新たな証拠をもっとも高く評価する.


9章 理由と証拠を組み立てる

9.3 証拠それ自体と,証拠を報告することを,きちんと区別しておく

p. 133
研究者は,読者と「証拠それ自体」を共有することはできない.

9.4.1 証拠を正確に報告する
もし自分自身が,その証拠にあやしいところがあることを認識しているなら,信用できないとしてその証拠を却下するのではなく,自分自身が懸念しているということを表すこと.そうすれば,不正直なふるまいとはならない.


10章 認識と対応

p. 139
あなたの論拠に対し読者が問いかける可能性があるのは,以下の2つの点に関してである.
・内部的な健全性 (intrinsic soundness): 主張の明確さ,理由の妥当性,証拠の信用性.
・外部的な健全性 (extrinsic soundness): 問題を別な視点でとらえられる可能性,見過ごされていた証拠,同じトピックに対する他者の議論.

10.1 読者がするように,あなた自身の論拠にケチをつけてみる

自分に間違ってもらいたいと考えている利害関係者のような視点から,自身の論拠を読んでみる.そして,彼らが投げかけると予期されるもっとも厳しい反論について,あらかじめ答えておく.彼らがそれを実際に投げかけてくる前に.

10.3.2 答えられない問いかけを認識しておく

もし,解決したり説明しきったりできない欠点を発見したなら,それを避けるために,問題を再定義したり,論拠を再構築しなければならない.しかしそれが不可能なら,タフな決断が必要とされる.
読者が気づかないことを期待してその欠点を無視することは可能だが,それは不正直である.もしみつかれば,その論拠のみならず,あなた自身の倫理や評判にも疑惑の目が向けられ,致命的なダメージを受けるだろう.
ひとつの方法は,素直だが,実際に効果のあるものだ.欠点をしっかりと認識し,
・その他の議論で欠点が補われている
・欠点は深刻だが,さらなる研究によって解決される
.欠点があるため主張をすべて受け入れてもらうことはできないが,この主張は問題に対して洞察を与え,より良い答えが必要であることを示唆した
ということを示す.

10.5 認識と対応のための語彙

実例がいろいろ.
p. 147
may は一般的な認識の語句である.
p.148
but, however, on the other hand など不賛成のシグナルとともに,反論を開始する.


11章 論拠

11.1 論拠とは,日常的な理由付けである

p. 153
理由付けの背後にあるロジックは以下のとおり.
一般的に言われている論拠が真であるならば,それに関わる何か特定の例もまた真である.

11.5 いつ論拠を言明するか考えてみる

p. 163
・読者が正しいと認めたがらないような主張をするとき.
読者が反抗すると考えられる理由や主張を展開する前に,読者が受け入れると考えられる根拠を示すことからはじめるのが良い.そうすれば,少なくとも,主張が合理的でないと見られてしまうのを防ぐくらいにはなる.


脚注

※1 研究者として,テーマをみつけ,結果を出し,参考文献を引用し,論文を書く際の心得やコツを一通りまとめた本です.
ロジカルシンキングやテクニカルライティングなどを扱った書籍はたくさんありますが,研究という営みに特化したものはこれまであまり読んだことがなかったので,非常に参考になりました.あまり見かけない表現などもしばしばありましたが,基本的には読みやすかったです.(ちなみに,本文中には,近々日本語訳も出版されるとの記述がありました)

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