2012/05/29

初心にかえって見直すプレゼン技術

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研究内容を,すこし離れた分野の方々にプレゼンテーションする機会が二度あり,初回は手ひどい失敗,二回目はある程度の成功をおさめたので,何が違っていたかを顧みて要点を書いておきます.

誰に何のためにどんな雰囲気で話すのか明確にする

who,why,howを早い段階 (話の流れを考える前) から明確にしておくということ.何のために話すのかをきちんと理解しておくということ.
この点を勘違いしていると,議論が詳細すぎて興味をもってもらえず,理解してもらえるだけの説明ができず,質問がでないため用意してきた補足スライドはほとんど使わないまま,2/5程度の時間を残して発表を終わる,などという散々な結果に終わるようなことがおこる.
これらを知るためなら,ある程度のコストはかけても良い.主催者や参加経験者に尋ねたり,会場を下見したり,とにかく納得できるまで動いてみる.

練習する

直前まで参考文献を読んでスライドを作り込むのも悪くはないけれど,それだけの時間は練習にあてたほうが良い.声を出して通してみなければ,時間配分や山場を把握するのは困難だし,なにより練習すれば自信がつく.
それに,往々にして,あわてて直前につくったスライドは,流暢に説明できるまで理解できていなかったり,意外な誤植があったりして使いものにならなかったりするものだし.
ただ,練習しすぎて気持ちのハリがなくなってしまうのは少々よろしくない.適度な緊張感を残しながらも,時間をコントロールできる感覚を得た時点でやめておくと,私の場合はちょうど良いみたい.

ポリシーやデザインに固執しない

スライド作成のポリシーやデザインの一貫性は,わかりやすさの次に来るべきもの.アニメーションが嫌いだったとしても,わかりやすくなるなら入れるべきだし,一貫した洗練されたデザインが崩れるとも,その結果わかりやすさが得られるなら,すこしためらった後に崩すべきなのだった.
デザインの一貫性が崩れたとしても,シンプルな図に加えたひとつの帯や,たったの一色が,わかりやすさを劇的に向上させることがある.

自分を観察する

発表の最中,自分が何を言い,どう見えているかを観察し,次から改善していく.
私の場合は,「えっと」という言葉を頻繁に発し,上体が落ち着きなく動くことがわかったので,次の発表では意識的にそれらを抑制した.
問題を抑制できているという事実を発表中に観察できれば,より一層自信を加えられるというメタな利点もある.

熱意と自信を表にあふれ出させる

聴衆だって発表の成功を願っているのだから,熱意と自信の見える発表者には,気持ちを入れ込んでくれる.
自分がおもしろいと思っていないものを発表して,誰が興味をもってくれようか.内容に自信が持てないなら,自信が持てるまで調べ物を繰り返すべきだし,それでもまだ自信がもてないなら,研究自体の意義を疑って良い.

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プレゼンテーションには自信を持っていただけに,初回の失敗は比較的ショックが大きく,あらためて初心にかえる良いきっかけになったように思います.

2012/05/22

言葉の軽さ

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最近,言葉がどうしようもなく軽い.

言葉は容易にあらわれるけれど,あとには形がのこらない.
行為のみが,言葉を形にするのを可能にする.

たとえば,「愛する」ということは,「愛している」という言葉をささやくことではなく,「愛する」という行為をすることである.
たとえば,「不安である」ということが言葉であるうちはまだ良いのだけれど,それが自他の行動として目に見えはじめると,不安は急にはっきりと重さを増す.

言葉と行為は,相互作用しあうループを形成しているのも事実だけれど,だからこそ,それらのあいだのバランスが崩れると,言葉も行為も力を失っていく.

今の私には,目に見える行為が,必要である.
そんなことを,言葉にのせて書き散らしている.