2012/08/31

空がきれいで

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今年の夏はよく空を見上げていたような気がする.
空が青くて,雲が白くて,アスファルトを焼く日差しがまぶしくて.

夜空もすてきだった.
都会の空は夜中でもぼんやり明るくて,雲が,月や星を覆い隠していても.

空は毎年変わらないのだけれど,それを見る自分のほうが変わったのかもしれない.
と,そんなことを考えた夏の夜.

2012/08/05

スゴ本オフ「ホラーの会」

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スゴ本オフ「ホラーの会」に参加できず,ちょっと悔しいので,紹介予定だった本をここに書いてみます.
ただし,ホラー然としたホラーは読んだことがないので,ちょっとはずれた感じのチョイスになりました.

まずは,ル・グウィンの『ゲド戦記 こわれた腕環』とトールキンの『指輪物語』.どちらもファンタジーの名作ですね.
これらは中-高校生のときに読んでいて,闇の描写が実に生き生きとしていたのが印象に残っていました.当時は,描かれている闇がまるで生きているように思えて,闇のもつぼやけた意志のようなものが,主人公たちの心を圧迫していく様子におそろしさを感じたのを,鮮明に覚えています.
しかし今あらためて読みかえしてみると,残念なことに,当時感じたようなぬめぬめした闇の質感はよみがえってきませんでした.うむむ….ほかにも,ゲド戦記に関しては,ジェンダーとか仕事とか,そういう当時はあまり意識しなかった観点からも物語を読んでいることに気づきました.久々に好きな本を読み返してみるのも,おもしろいものですね.


次は内田百間の『冥土』と『東京日記』.ちなみに,百間の本は全般的に大好きです.
さて,これらは特に,日常がふと異界につながるさまを描いた不思議な作品群です.どちらも短編が収められ,後者に関しては,東京の馴染みある場所が舞台になっている分,不思議な印象がいや増しています.夏目漱石の『夢十夜』とテイストの似たところがありますが,『冥土』や『東京日記』には,百間のこだわりというか,普通であれば言葉を尽くさなければ伝わらない個人的な執着のようなものが,さらっと著されているように思います.このにじみ出るこだわり・執着の強さが,百間の文章の魅力であり,飲み込みづらさであると私は思っています.もうひとつ,他人から自分がどう見えるか,という点に関する不安を,百間は実にうまく表現する作家であるようにも思います.


最後は鈴木尚の『日本人の骨』.著者は著名な形質人類学者です.
鎌倉の海水浴場のすぐ近くに,鎌倉時代の大量の人骨が埋まっていた (埋まっている) ことを,また,東京都心のいろいろな土地から,さまざまな時代の人骨が今も出土することを,ご存知でしたでしょうか?この本は,そうしたさまざまな人骨の形や時代から,どのような研究がなされてきたかを,わかりやすく紹介しています.紹介されている人骨は,ものによっては刀創のある個体であったりしますが,ホラーではないかもしれません…そうですね,骨の話です.


こんなところで紹介を終わりますが,ホラーと言って怖いのは,闇とか異界とか骨そのものではなくて,その奥にある,人の,尋常でない意志なのかもしれませんね.恨みとか,怨念とか,そういうものを,物理的な対象に意味づけてしまうのが,ヒトという生き物の性なのでしょうか.